今年もノーベル文学賞は村上春樹ではありませんでしたね。
しかし、今回のノーベル文学賞は日本にゆかりのあるカズオ・イシグロさんが受賞しました。
カズオ・イシグロという名前からも分かる通り、カズオ・イシグロさんはもともと日本人でした。
5歳で日本の長崎を離れ、渡英して以降はイギリスで生活をし、また国籍はすでに英国の国籍を取得しています。
ですので、カズオ・イシグロは元日本人、現イギリス人です。
そんな彼の小説では、日本を舞台にしたもの多くあります。
日本人の血が流れているというのを感じますね。
今回は、そんなノーベル文学賞受賞者であるカズオイシグロのおすすめの小説や代表作を紹介していきます。
これまでカズオ・イシグロという名前を聞いたことがなかったよという人、カズオ・イシグロの本を読んだことがないよ、という人は必見です。
1、『わたしを離さないで』
まず最初に紹介するカズオ・イシグロのおすすめの本は『わたしを離さないで』です。
この『わたしを離さないで』と、次に紹介する『日の名残り』がカズオ・イシグロの二大代表作です。
「わたしを離さないで」には、カズオ・イシグロの真髄が現れています。
この小説における心理描写は、他の作家とは一線を画しています。主人公の心理描写の繊細さは本当に目をみはるものがあります。
その心理描写に触れられるだけでも、この本を読む価値があります。
しかし、もちろん「わたしを離さないで」はそれだけの本ではありません。
「わたしを離さないで」では「介護人」の主人公が過去を懐古する形で話が進んでいきます。
その世界は我々の住む世界とは違い、多くの奇妙な点があります。
それが徐々に明らかになっていく点(全てが明らかになるわけではないですが)、じんわりと続いてくストーリー。
現代の大衆小説とは違い、大どんでん返しがあるわけではないですが、「わたしを離さないで」は今まで読んだことのないようなテンポ・リズムの本です。
この本を読んで、もし面白いと思うのであればあなたはカズオ・イシグロのファンになれると思います。
一方、この本があなたの感性に合わない場合は、多分カズオ・イシグロの他の本も合わないと思います。
それぐらいこの「わたしを離さないで」はカズオ・イシグロの全てが詰まっています。
初めてカズオ・イシグロの本を読むのであれば、この本と次に紹介する『日の名残り』の二冊がおすすめです。
2、『日の名残り』
続いて紹介するカズオ・イシグロのおすすめの本は、『日の名残り』です。
先ほども述べましたが、『日の名残り』はカズオ・イシグロの二大代表作のうちの一つです。
『日の名残り』の主人公でありこの小説の語り手は、英国で執事として生きてきたスティーブンスという男です。
小説の中ではこの男が、彼の人生を懐古していきます。
主人公が過去を振り返るというスタイルは、カズオ・イシグロ作品に多く見られます。
このスティーブンスは、執事として”品格”を最も大事にした結果、品格ある執事の道を辿れたものの、同時に様々な”大事なもの”も失っていきました。
それを懐古するスティーブンスは自分の今までの人生を肯定するために、物語を通して”大事なものを失った”という事実を否定しようとします。
これは誰しもが持っている感情だと思います。失敗だったかもしれないがそれを認めたくない。それを認めてしまえば、今までの人生を否定することになるから、、、と。
主人公のスティーブンスがそれを認めたとき、真実と向き合ったとき、湧き上がる感情は後悔や絶望です。
人間の心の中を本当に表現しています。これは年を取ってから読むと死ぬほど泣ける本だと思います。
だからこそ、若い人にこそ読んで欲しい本です。
ただ、とても暗い本というわけではないので、この本を読んで絶望することはありません。
むしろ、読後感は素晴らしく、余韻に浸れる本です。
ぜひ『日の名残り』も読んでみてください。
『日の名残り』と『わたしを離さないで』を読めばカズオ・イシグロのことを知っていると自負しても問題ないくらい、この二作が彼の代表作です。ぜひ読んでみてください。
3、『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』
続いて紹介するカズオ・イシグロのおすすめの小説は、『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』です。
この本はカズオ・イシグロ作品には珍しく、短編集です。
音楽に関連のある短編が5つはいった小説です。
五つの短編にはもちろんカズオ・イシグロらしさが溢れており、どこか寂しげがあり、どこか不思議な感覚です。
一方、短編集は他の長編と異なる点が一つあります。
それは、ユーモアさの度合いです。長編に比べると、比較的ユーモラスな作品に仕上がっています。
なので、他の本にも増して読みやすい一冊です。
また、カズオ・イシグロは昔音楽家を目指していたこともあり、音楽に対する造詣が深いです。
『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』で、文学でありながらまるで本当に音楽が耳元で聞こえるかのように表現されているのは、カズオ・イシグロならではです。
『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』は上記の二冊ほど有名ではありませんが、ぜひ読んでほしい一冊です。
4、『忘れられた巨人』
続いて紹介するカズオ・イシグロのおすすめの本は『忘れられた巨人』です。
この本の舞台は古代で、竜のはいた息によって人間の記憶に靄がかかってしまうという設定です。
そしてそんな世界で、記憶の不確かな老夫婦が、本当にいるのかも分からない(記憶が曖昧)息子に会うために旅をするお話です。
この本は小説としての設定も面白く、話の展開だけでも楽しめます。エンターテーメント性も兼ね備えていると言えるかもしれません。
しかし、もちろんただの大衆文学なんかではありません。
「忘れられた巨人」もカズオ・イシグロ作品らしい哀愁が漂っています。
人間の記憶について、人の人生についてすごく考えさせられる本です。
この本も読後感は素晴らしいです。ぜひ読んでみてください。
おわりに
カズオ・イシグロの小説には独特の世界観があります。
人間の内面をえぐりとるその表現力、描写力は本当に目をみはるものがあります。
カズオ・イシグロの本は一度ハマったら抜け出せなくなる、そんな魅力があります。
ぜひ一度読んでみてください。