小説を自分で書いて新人賞に応募する際、「視点」は非常に重要です。
視点がしっかりしている小説は、新人賞の一次選考を通る確率が高くなりますが、
視点があやふやな小説は、決して新人賞の一次選考を通ることはありません。
確実に落選してしまいます。
それだけ小説を書く上で大事である「視点」について、今回は解説していきたいと思います。
小説の視点には大きく分けて三種類ある
小説の視点には大きく分けて三種類あります。
一人称視点、三人称視点、そして神様視点です。
一人称視点はまさに『俺』や『私』を主語とし、主人公の視点で描かれます。
三人称視点は、第三者を視点として書きますが、一人称視点と非常に似ています。
『佐藤が朝目覚めると、部屋には眩しい光が注いでいた。』のような文章で構成された小説が三人称視点です。
主人公の真後ろにカメラがあるイメージです。
神様視点は、主人公以外の人も、主人公と同様に描くような視点です。
これだけだと何を言っているかよく分からないと思うので、ここからはそれぞれの視点について詳しく見ていきます。
(小説の新人賞の選び方や、小説の新人賞の一覧についてはこちらの記事にまとめているのでこちらも参考にしてください)
小説の一人称視点
まず最初は一人称視点です。
これは『俺』、『私』、『僕』などを主語とした小説です。
初めて小説を書く人が一番使う視点です。
実際私が小説を書いて新人賞に応募した際も一人称視点で書きました。
一人称視点の特徴は、主人公の気持ち、心情等を書くことができる点です。
『私』や『僕』が実際にどう感じたのかを書くことができます。
と言うより、一人称視点なのに、主人公の感情が書かれていなければ非常に奇妙な文章になってしまいます。
一人称視点で小説を書く際には、しっかりと主人公の気持ちを書かなくてはなりません。
一方、主人公以外の感情を書くことはできません。
主人公の目を通したものしか基本的には書くことができません。
目の前の『鈴木さん』の気持ちを推測することはできますが、それはあくまで『私』の推測にすぎないので、
「鈴木さんは怒りを覚えた」
とは書くことができません。
「目の前の鈴木さんは肩を震わせて立ち尽くしていた」
のように描写する必要があります。
一人称視点の小説で、他人の感情を他人視点で書いてしまったら、その時点で小説としては破綻してしまいます。
この点は十分に気をつけましょう。
また、先ほども少し述べましたが、基本的には主人公の見えるものしか描写できません。
主人公が存在する場所以外で起こっていることは書くことができません。
これが一人称視点の弱点であると言えます。
対処法としては、主人公を章ごとに変えるという手法があります。
伊坂幸太郎さんの作品等でよく見られる手法です。
以上が小説の一人称視点についてでした。
実際に一人称視点で書いて新人賞に応募する際には、まず一人称視点で書かれた小説を読むことを強くお勧めします。
ぼくは勉強ができない (新潮文庫)やぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)、そして、テロリストのパラソル (文春文庫)などが一人称視点で書かれた小説としてはおすすめです。
どの作品も一人称視点で書かれており、一人称視点の書き方が分かると思います。
小説の三人称視点
一人称に続いて、三人称視点について説明していきます。
ここでいう三人称視点とは、主人公の真後ろでカメラを回しながら描写するイメージです。
すなわち、『佐藤が学校に着くと、既に授業は始まっていた』のような文章です。
三人称視点は一人称視点と非常によく似ています。
一人称視点では、文章の書き手、語り手=主人公でしたが、
三人称視点では、文章の書き手、語り手=あなた です。
しかしその書き手であるあなたは、常に主人公の真後ろにおり、その主人公の真後ろから主人公や主人公の見る景色を描写していきます。
ですので、一人称視点と同じく、主人公と遠く離れた場所で起こる出来事を主観的に描写することはできません。
一人称視点とほぼ同じように思えますが、違うのは主人公を客観的に描写できる点です。
一人称視点では、主人公を外から見ることは不可能です。
しかし三人称視点は、主人公を外から見ることが可能となります。
主人公の見た目の描写等も可能となります。
一方主人公の心の中は基本的には見ることができません。
(時々三人称視点で、主人公の感情を書いているものもありますが。)
以上、三人称視点についてでした。
三人称視点についても、自分自身で初めて小説を書く際には、やはり三人称視点で書かれた小説を読むことをお勧めします。
三人称視点の小説でおすすめなのは八日目の蝉 (中公文庫)です。
八日目の蝉は、第一章と第二章からなりますが、第一章が三人称視点、第二章が一人称視点で書かれています。
一人称視点と三人称視点の違いがよくわかる本です。
小説の神様視点
最後に説明するのが『神様視点』です。
神様視点は一人称視点や三人称視点と全く異なります。
カメラが特定の誰か(主人公など)の真後ろにはありません。
神様視点では、俯瞰で撮影しているイメージです。
主人公の「佐藤さん」のことも、主人公の友達の「鈴木さん」のことも同じように書くことができます。
ですので、主人公のいない場面で起こることも書くことができます。
これが神様視点で小説を書く際のメリットです。
ですが、気をつけなければいけないのは、俯瞰で見ている以上、それぞれの登場人物の子心の中を見ることはできません。
(もちろん例外もありますが。)
実際、神様視点で書いているのに、突然主人公目線で書いてしまうことは多々あります。
しかし、神様視点では、もちろん主人公目線で書くことはできません。
神様視点は一人称視点や三人称視点に比べて、初心者が小説を書く際には難しいと思います。
無難なのはやはり一人称か三人称視点です。
しかし、小説の内容によっては神様視点の方が合うこともあります。
その際には、常に俯瞰で見るようにして小説を書いてください。
小説の視点についてここまで書いてきましたが、より詳しく小説の視点について知りたい方は『1週間でマスター 小説を書くための基礎メソッド』という本がおすすめです。
視点についてさらに詳しく書かれているだけでなく、ストーリーの書き方や登場人物の書き方等も分かりやすく書かれています。
まとめ
今回は小説の視点について詳しく見てきました。
小説の新人賞に応募する上で、視点は非常に重要となってきます。
視点でミスがあれば一次選考は通過することができません。
一次選考を通過するためにも、視点には気をつけましょう!